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(これでも三訂版) ・サイレントヒルとのクロスオーバー。グロ描写注意。 「これ、返す」 「おう、やったのか」 有希がキョンに何かのゲームソフトを渡すのが見えた。有希もゲームをするのね、ちょっと意外。どんなのかしら。 「それ、何?」 「ああ、零だよ」 キョンがソフトをこちらに見せた。いかにもなパッケージをしているところからするとホラーゲームみたい。あたしが好きなジャンルではないみたい。 「お前はこういうのが好きじゃないみたいだな」 キョンがそう言ったのでびっくりした。 「な、なんで分かったのよ」 「期待して損した、みたいな表情をしてたからな」 そんな表情してたのかしら……。こいつ時々鋭いから困ったものだわ。 「で、有希、それをやってみてどうだった?」 「人間の想像力は……恐ろしい」 いつもより小さな声でそういうと俯いてしまった。 「どうしたのよ有希。まさか、怖かったの?」 「違う」 即答だった。必死さを感じたのは気のせいかしら。 「そんなことはない。決してトイレに行くことが出来なくなったり、布団に潜ったまま翌朝まで身動き出来なくなった訳ではない」 有希……全部言ってどうするの……。 「貸しておいて何だが……スマン」 「いい」 やがて古泉君やみくるちゃんがやってきた。古泉君がそのソフトの箱を見るなり言った。 「まさか貴方がそのような分野のを持っているとは思いませんでした」 「興味本位でな。あの怖いCMがちょっときになってな」 すぐにどんなのか判ったってことは古泉君もやったことあるのかしら。ちょっと内容が気になるけど……怖いのよね。 「そんなの怖くてできないです……」 そう呟いたみくるちゃんに同意せざるを得ないわ。 「キョンってどんなジャンルのゲームをするの? まさかそんなのしかないとか言わないでしょうね」 「さすがにそれはねーよ。妹もいるんだしな、パーティゲームとか大衆向けのももそれなりにあるぞ」 「ふーん、じゃあ週末はキョンの家でゲーム大会ね」 「え、ん、まあいいが」 「じゃ決定ね。ということだからみんなよろしく!」 その後、有希は読者を再開していたし、古泉君はキョンとチェスを始め、みくるちゃんは紅茶を選んでいた。 あたしは特に何をするということもなく、適当に検索して開いたページ眺めてた。 さっきの零とかいうソフトについて調べないのかって? 冗談じゃないわ、あんなアブノーマルなのあたしには向いてないもの。 「あ、あれ……?」 気が付くと、あたしは真っ暗な駅のホームに立っていた。 何で? さっきまで部室にいた筈なのに。 慌てて辺りを見回すけれど、ホームどころか駅の周辺からも人の気配が全然しない。 「どうなってるのかしら」 ホ-ムを改めて見回してみる。見たくなかったけれど。 蛍光灯だけが照らしている構内は随分と汚くて、柱なんて赤錆でボロボロになっている。地面のコンクリートが赤いのもそのせいよ。 そのせいよね……。 ここはどこの駅なのかしら。全く見覚えがない。外に明かりはなく、この駅以外は永遠に続きそうな真っ暗闇しかない。 一体何が起こったのかさっぱり分からない。あたしは一歩も動けずに 「いやああああああああああああああああああああ!!!」 その突然の叫び声にあまりに驚いたあたしは、一瞬呼吸を忘れてしまった。 「何!? 何なの!? さっきの悲鳴は何なのよ!?」 パニック寸前のあたしは一刻も早くここから出ようと、改札口へ走った。自分の荒い息遣いと壁に反響した足音だけが聞こえる。 周りを見ている余裕なんてなかった。後で思うと、見なくて正解だったかもね。 恐怖からの逃避を図ったその先で、あたしは地獄を見た。心臓が縮み上がった。全身から血の気が引く音がした。 改札口の辺りは血痕だらけになっていた。床も壁も天井も……、一体何をすればこんなに飛び散るのだろう……。 そして改札機のそばには何かが 「……みくるちゃん!?」 どうして? どうしてこんなことになってるの!? 血まみれになって倒れているみくるちゃんはあたしの声に気付いてこっちを見た。 「みくるちゃん! 何があったの!? しっかりして!」 「涼宮さん…………逃げて下さい…………。この世界は…………もう…………」 「何言ってるの!? みくるちゃん! 」 「……じ………く…………」 「 !」 「………………………」 もうみくるちゃんが何を言ったか聞き取れなかったし、自分が何を言ったかさえ覚えていなかった。 「 !」 「」 「」 「」 「」 「 「 「 「おい、ハルヒ? ハルヒ?」 あたしは気付くと、机に突っ伏して寝ていたみたいだった。額は汗でびっしょりになっていた。 ゆ、夢? そうよね、あんなこと現実にはあり得ないもの…………。 「どんな夢を見てたんだ? 随分と苦しそうだったが、大丈夫か?」 キョンはまだ呼吸の整っていないあたしを心配しているみたい。 視線を移すと、心配そうにこちらを覗くみくるちゃんが見えた。ちゃんとメイド服を来てるし、勿論血なんてついてない。 あたしは立ち上がると、何か話しているキョンを無視してふらふらとした足取りでみくるちゃんに近付いた。みくるちゃんは少し驚いた表情をしていたけどね。そんなのどうだっていいわ、さっきのが夢だっていう証拠が欲しかったから。 「みくるちゃん、何も起こってない……よね……?」 「え? は、はい、いつも通りですよ」 あたしはみくるちゃんに抱きついて泣いていた。 「す、涼宮さん?」 「ちょっと……怖い夢を見ちゃったから……。うん、大丈夫よ……」 みくるちゃんは、優しくあたしを撫でてくれた。ちょっと恥ずかしかったから、悪夢を見たのをキョンのせいにして解散した。 家に帰ってからは、一晩中なんだか怖かった。それはもうキョンから借りたゲームの所為で動けなくなった有希といい勝負だったかもしれない。 けど、何も起こらなかったし、あの夢も見なかった。 でも、翌朝にそれは起こった。 あの悪夢はただの夢だったことにほっとして、何時ものように学校に向かっていたあたしは、突然目眩に襲われて倒れた。 気がつくと、ほほにアスファルトの感触がある。その場に倒れたままだった。 「ったく……誰も助けてくれないなんて薄情な……」 ここは一通りの多い通学路なのに、人の気配が一切なかった。 そして辺りは真っ白な霧で覆われていて、5メートル先も見えない状態だった。 「え? なに……これ……」 何より不安を誘うのが、全くと言っていいほどに音が無いことだった。 音がしないなんて雪が降った日みたいだけど、今は凄く不気味に感じる。 無響室に入れられた人は不安感を抱くとかいう実験について聞いたことがあるけど、今のあたしはそれに近い環境下におかれているのかもしれない。 ここは毎日通る道なのに、どう進めばいいか分からない。電柱とか、特徴がある家とか、そういった目印を探しつつ学校へ向かった。もう家を出てしまった以上、学校に行った方が安全だと思ったから。 そうして何とか進んでいた時、私は不意に足を止めた。 白い霧の中に、ぼんやりと影が見える。その形からして、路上に誰か倒れているようにしか見えなかった。 あの時のよく似た状況の記憶が頭を埋め尽くす。 嫌、見たくない…………。 それでも、あたしには前に進むしかなかった。 重い足取りでも、確実にそれに近づいていた。 やがて霧の中から見えてきたのは、血溜まりに倒れているキョンだった。 「……え…?」 今回は夢じゃない。体を流れる血が冷たく感じた。 「嘘……でしょ……?」 キョンを揺さぶっても、全然反応しない。手も首も、だらんと重力に負けたまま……。 「嘘って……、言ってよ……ねえ!」 あたしの両手が真っ赤になっていた。キョンはおびただしい量の血を流して、温かさを失っていた。 「どうすればいいの……!」 救急車を呼ぼうと思い立って、慌てて震える手で携帯を取り出した。 「……どうして?」 圏外という赤い二文字が画面に表示されていた。助けは来ない、あたしにも助けられない。 キョンは死んでしまった? これはみくるちゃんの時と同じ「夢」……よね……? でも、このべっとりとした嫌な感触や、鉄の臭いは…… ………… ………… あたしは狂ったように泣き叫んだ。声が裏返り、しわがれても構わずに叫び続けた。 「…………!」 あたしは泣くのをやめた。 足音が聞こえた。しかもそれが段々と近づいていた。 「だ、誰……誰なの!?」 あたしは虚空に向かって叫んだ。虚勢でも張っていないとおかしくなってしまいそうだった。 すると、返事が聞こえた。 「涼宮さん!?」 あの声は、古泉君! 良かった……。 霧の中から姿を現したのは間違いなく古泉君だった。 「涼宮さ…………」 古泉君はキョンの亡骸を見て言葉を失った。 「これは……」 「あたしが来た時には、もう……」 「朝比奈さんに続いてまさか彼が……」 その言葉にはっとした。 「みくるちゃんも!? どういうことなの?」 「朝比奈さんは、先日、駅の改札口で」 「何ですって!?」 古泉君の話していた内容は、あの時の夢と全く同じだった。 あたしは頭を抱えた。ひどく混乱していた。信じたくないことばかりがぐちゃぐちゃになって頭の中を掻きまわしていた。 どういうことなの? あれは夢じゃなかったの? 「このままでは、この世界は……終わってしまいます」 それは、みくるちゃんと同じ台詞だった。 『この世界は…………もう…………』 「古泉君、この世界って何なの? 何でみんな殺されたの? この世界はどうなっちゃうの!?」 あたしが古泉君に掴みかかっていたその時、後ろから声がした。 「あら、揃ったのね」 振り向いたけど霧しか見えない。 「誰よ!」 「あら、名前なんて言わなくても分かるでしょ?」 霧の中から、うっすらと影が見えてきた。 「彼を殺したのはあたしよ。話を面白くするには良い演出でしょ?」 笑っているような口調だった。 「ふざけるな!」 あたしはそいつに向かって怒鳴った。 「ふざけてはないったら。彼もあの子も必要な犠牲なんだから」 まさか、みくるちゃんもこいつが……。そう判断した瞬間、自分自身でも驚く程の激しい憎しみという感情を抱いていた。 「良いわねぇ……、良いわその表情……。あたしを殺したいの? 出来るかしら?」 あたしは呼吸が荒くなっているのが分かっていたけれど、それを抑えることはしなかった。 「悔しいのなら、学校で待ってるからいらっしゃい。面白いものを見せてあげるから」 そう言って、そいつは霧の中に消えた。 キョン…… そいつが消えた頃にあたしはようやく落ち着いた。古泉君が霧で真っ白の世界を見回しながら呟いた。 「僕自身も、裏世界にいるのは初めてなんですが……。この霧の世界……、まさにサイレントヒルですね」 「それって……あたし達はホラーゲームの世界に放り込まれたってこと? 冗談じゃないわ!」 本当に冗談じゃなかった。ホラーの世界が現実になったら……とてもじゃないけど、主人公みたいに生き残れる自信なんて……。 「しかし、このままでは何も進展しません。ここで敵の襲撃を受ければ助かる見込みはありません」 あたしは決意した。キョンの仇を取らなきゃ。 「……分かったわ、あたし達が主人公になってやろうじゃないの。主人公は不死身なんだからね」 あたしは別の世界の涼宮ハルヒだと説明すると、古泉君はあっさりと理解してくれた。 なんで不思議に思わないのだろう……。 古泉君によると、この世界のあたしは数日前に失踪してしまっている。それ以来、裏世界と呼ばれるおぞましい空間が発生し、そこで殺人事件が起こっているらしい。 その犠牲者はキョンやみくるちゃんを含めて20人を超え……。 そして、今いるのがその裏世界。惨劇の舞台に、あたし達はいる。 「つまり、狙われてるってこと?」 そう思いたくなかったけど、そう思わざるを得なかった。 あたし達はあの女のいる学校へ向かうことにした。 何かが襲ってこないか不安だったけども、静寂を破るようなことは起こらなかった。 どれくらいの時間が掛ったのだろう、霧の中を歩いて、ようやく学校に着いた。 でも、古泉君は入るのを躊躇っていた。 「どうしたの?」 「裏世界の詳細をご存知ですか?」 「どんな世界なの?」 「その世界の建物の内部はとても凄惨なことになっています。最もおぞましいと言われる程だそうです。覚悟をしないと、精神的に参ってしまいます」 あたしは頷いて学校へと入った。 覚悟はしていたつもりだった。 でも、古泉君が言っていた通り、入った瞬間に食道がケイレンを起こした。 「ぅ…………」 あの時の駅より酷い、酷過ぎる。 「大丈夫ですか?」 何もかもが赤錆と血飛沫でどす黒い赤色になっていた。血の臭いがする……。この学校のあらゆる場所で殺し合いがあったような状態だった。 「ええ。なんとかね……」 蛍光灯は全部割れていて、外の霧が唯一の明かりになっていた。 「かなりの邪念を感じますが……、とりあえず、進みましょう」 「ええ、そうするしかないわね……」 昇降口 まず、自分の上靴の場所を調べる。 履き替えるつもりなんて勿論無い。血でこんなに汚いんだから、土足でも構わないだろうし。 二度と触りたくないくらいに汚い上履き以外は、変わった物は入っていなかった。 「おや、これは心強いですね」 古泉君が見つけたのは、ショットガンだった。弾も幾つか見つけたみたいだった。 古泉君は、弾をポケットに入れると、その一つを装填して構えた。手慣れたように見えたのはどうしてだろう。 「頼れる武器があると、やはり落ち着きます」 こんな物騒なものを手にして落ち着くなんておかしいけど、今は命の危険に晒されているのだから、古泉君が正しいと思う。 「この世界がゲームと同じなら、武器はいろいろと見つかる筈ですね」 なるほど、だから学校にそんなものが置いてあるのね。 あたしも何か役に立ちそうなアイテムはないかと見回すと、傘立てに傘に混じって何かが立ててあった。 手に取ると、日本刀だった。鞘に紐がついていたので、それを腰に巻いて結んだ。 「いいものを見つけたみたいですね」 ショットガンを持った古泉君が言った。 「僕も近接武器が欲しいですね。ショットガンには弾に限りがありますから。銃身で殴るには少々重たいですし」 ズズッ…… その時何かの音がした。 「おやおや、歓迎でも来たようですね」 勿論そのままの意味でないことは知ってる。敵でしょ。 廊下で何かが動いていた。 それが這ってこちらに来ている。だんだんとその姿がはっきりと見えてきた。 ゾンビというのかは分からないけど、人の形をした血まみれの気持ち悪い生き物が近付いていた。 「涼宮さん、下がって下さい」 「いえ、その必要はないわ……」 あたしは刀を鞘から引き抜いて、銀色に輝く刃を見つめた。 決心したんだもの、あたしはキョンの仇を討つまでは……いえ、討っても死ねない! 「弾はもしもの時の為にとっときなさい!」 あたしは目の前の敵に向かって走った。 あたしの姿を認めるとそいつは何やら呻いていたけれど、そんなの気にせずに素早く背後に周りこんで、これでもかという位に斬りつけた。 背中から血を噴き出してもがいていたけど、蹴りを一発お見舞いしたら動かなくなった。 「す、凄いですね涼宮さん」 古泉君の視線で、あたしは大量の返り血を浴びていた事に気付いた。それを見たから、古泉君は少し驚いたのだろう。 「この調子ならノーダメージでいけそうね」 「では、行きましょうか」 1F 薄暗い廊下を歩いて行く。目的地は分からないけど、学校のどこかにアイツはいるから順番に回っていけばいつか見つかるだろうし。 古泉君が腕を組んで壁とにらめっこをしていた。 「これは……困りました。ここには手洗い場があったはずなんですが」 確かに、ここにはトイレがあった筈なのに、真っ赤で気味の悪い壁しかない。 「どういうこと……?」 「特に仕掛けもないようですし、配置が変えられていると考えるのが一番かと」 配置が変えられているだけじゃなかった。とても学校とは思えないくらいに廊下が入り組んでいた。 「なによこれ、迷子になっちゃいそう」 迷宮のような廊下を真っ直ぐ進んで行くと、机と椅子が山のように重なっていて行く手を阻んでいた。 「」 「これはどかしようがありません。仕方ありませんので、引き返しま……」 振り返った時に、あたし達は硬直した。 おぞましい生き物が天井からぶら下がってこちらを見ていた。 さっきのとは形が少し違う。天井から人間の上半身が生えているようだった。 あたしは思わず叫んだ。そして、 「よくも脅かしてくれたわね……!!」 冷静さを失っていた。 刀でこれでもかと言う程に斬りつけた。 「涼宮さん……落ち着いて下さい!」 古泉君があたしを止めた時には、その生き物は原形を止めない程になっていた。 説明してほしい? 簡単にいえば乱切りよ。それ以上は言いたくないから。 あたしは肩で息をしていた。なんでこんなにムキになっていたのだろう。 「冷静になることも必要ですよ。体力も消耗しますし」 古泉君は少し怯えた表情であたしを見ていた。自分の言動で逆上されることを恐れているようだった。 なんだか腫れ物に触るような扱いに感じて悲しくなった。 行き止まりから引き返す途中、あたしのクラスの教室を見つけた。 「何で気付かなかったのかしら」 ちょっと期待してたけど、中に入るとあたしの席もキョンの席も、やっぱり血がべっとりとついていた。 キョンの机の中から何かがはみ出ていた。出してみると箱があり、その中に拳銃と幾つかの弾倉が入っていた。 「何でわざわざ箱に入れてあるのかしら」 疑問に思いながらも拳銃をポケットにしまった。 「おや、これはこれは」 「どうしたの?」 古泉君が掃除用具入れから鉄パイプを見つけていた。 「手頃な武器が見つかりました」 感触を確かめるようにパイプを振っていた。 「ねぇ、おかしいと思わない?」 古泉君は表情を引き締めた。 「ええ、確かに招き入れた割に大した罠もなく、かつこれだけ武器が用意してあるというのは少々不自然です」 「だとすると、この世界にあたし達の味方がいるのかしら」 「そうとも考えられます。しかし過度の期待は禁物です。このように武器を提供するので精一杯なのかもしれませんから」 2F 階段を上ったところでいきなり現れた巨大化したゴキブリみたいな虫の大群に対し、古泉君の鉄パイプが早速活躍した。 古泉君が何とかしてくれていなかったら、あたしは卒倒してたかもしれない。想像してごらんなさい、でっかいゴキブリが顔めがけて飛んできてかじりつこうとしてくるのよ。生きた心地がしないわ。 虫の大群はいまや抜け殻の山となっていた。それを蹴散らして廊下を進み、部屋を確認していく。 「……あった!」 こんな所に部室があった。SOS団と書かれた紙に希望が膨らむ。 でも、扉をあけて中に入るとやはり酷い有り様だった。 「うわ……」 本が棚から崩れ落ちたままの状態で埃をかぶり、みくるちゃんの衣装までもが血で染まっていた。 だけどそんな中で唯一、パソコンだけが血を浴びずに綺麗なままだった。 それには二人ともほぼ同時に気付いた。 「古泉君、あのパソコン」 「何かヒントがありそうですね」 「やっぱり味方がいるって考えで正解みたい。よかった」 スイッチを押すと、黒い画面に文章が現れた。 『このメッセージは条件を満たすと表示されるものであり。そちらとの疎通は出来ない』 あらかじめ用意されたプログラムってことかしら。 『裏世界と呼ばれるその空間は現実から隔離されている別の世界』 これは古泉君から聞いたから知っている、でも、その後に表示された一文にあたし達は首をかしげた。 『しかし、神がその世界を支配すれば、その世界が現実となる』 ……つまり、この気持ち悪い世界が現実と入れ替わるってこと? 冗談じゃないわ。 それより、気になる単語があった。 「神とは何のことでしょうか……」 「少なくとも、良い神じゃなさそうね」 パソコンは神ついて詳細を述べることは無かった。でも、そいつにこの空間を支配されたらおしまいってのは分かった。 『クリーチャーは貴方達の憎悪や恐怖が実体化したもの。冷静さを保てば遭遇する頻度は下がると予測される』 つまり、あたしがもっと冷静になれば厄介な敵は現れなくなるってこと? 「ごめんね古泉君、こっからはもっと落ち着いて行動できるように気をつけるわ」 「いえいえ、謝らなくて結構ですよ」 *** 朝学校に来ると、ハルヒがいなかった。珍しく遅刻をしているようだ。 あくびをしながらその空席を見ながら座った時だった。 喜緑さんが教室にやって来た。そして真っすぐに俺のところに歩いてくる。喜緑さんが俺に用があるということは何かでっかい事件があったということだろうか。 「涼宮さんが登校途中で倒れて病院に運ばれました。これは緊急事態です」 いきなりのことに、俺は仰天した。 「なんだって……?」 俺は机上に置いたばかりのカバンを再び持つと、喜緑さんと一緒に教室を出た。授業? サボりというやつだな。 外で朝比奈さんが待っていた。 「キョン君……涼宮さんが……」 「喜緑さんから聞きました。早く病院に行きましょう」 「こちらに来てください」 喜緑さんに手招きされて近づいた瞬間、世界が一変した。 「へ?」 「ん?」 いつの間にか病院の前に立っていた。空間移動をしたらしい。 って古泉はいないが置いて来たとかそういうことはないですよね。 「既に病室にいます。詳しい話は皆さんが揃ってからに」 病室に入ると、ベッドでハルヒが眠っていた。その傍で古泉が待っていた。 「待ってましたよ」 「ハルヒは一体どうしたんだ」 「目撃者の話では、歩いていて突然全身の力が抜けたように倒れたそうです。その原因は……」 「それは私が説明します」 喜緑さんが割って入った。そんなに難しく深刻な話なのだろうか。心配になってきた。 「現在、涼宮さんの精神は抜き取られて別の世界に閉じ込められているようです」 別の世界って……。 「その空間に干渉しているところですが、情報改変が殆ど出来ていません。彼女にヒントや武器を与えることが精一杯です」 武器? どういうことだ、そんなに危険な世界なのか。 「簡単に言うと、サイレントヒルの裏世界、という表現が貴方がたには一番分かりやすいと思います」 「ぇぇっ?」 隣で朝比奈さんが俺以上に驚愕していた。朝比奈さんも知ってるんですか? 「はい、ホラーゲームの初期作の一つとして有名ですから……。でも、あんなゲームの世界に閉じ込められるなんて……」 そこで朝比奈さんがハッとした表情を見せた。 「もしかして昨日の……!」 「昨日ハルヒがうなされてた悪夢のことですか?」 「はい、それが何なの予兆だったのかもしれないです」 「そんなことがあったのですか。やはり狙われていたようですね」 喜緑さんの言う『狙われていた』というのはどういうことなのだろうか。 「閉じ込められている目的は何なのですか」 喜緑さんは古泉の質問に一切のタイムラグなく回答した。 「彼女を閉じ込めた相手はあくまで本気のようで、ゲームの様に楽しませる積もりは毛頭ないようです。相手の目的は、彼女を生け贄にして神を生み出し、その力で裏世界を現実と入れ替えることと推測されます」 生け贄……? おいおいまてよ。 それって、つまり……。 このままじゃハルヒが殺されるのか!? 「なんとかして助けられないんですか!?」 「何度も裏世界の改変を試みましたが成功していません。また相手の正体は不明で、神がどのような力を持つかも推測に過ぎません」 「そういえば、長門さんはどうしたんですか?」 朝比奈さんの一言で思い出した、長門がいない。なんでこんな時にいないんだ。 「長門さんは……隣の病室にいます」 なんだって? 「彼女は裏世界への侵入を試み、現在涼宮さんを捜索中です」 *** 涼宮ハルヒの精神が隔離された空間への侵入を試みたところ、突然「目眩」という症状を起こし、気付くと学校にいた。 しかしそれは全く似て非なるものであった。配置が著しく変えられた校舎内はどこも血痕だらけで、とても禍々しい光景だった。 ここに涼宮ハルヒがいる。 ……おかしい、統合思念体との連絡がとれないので現在の状況すら把握出来ず、おまけに情報操作が全く行えない。 有機生命体の五感を頼る他ないようだ。 前方に何かがいた。 *** 3F 階段を登り終えたときから古泉君の様子がおかしい。 さっきから落ち着きがないし、まるで風邪を引いたみたいに震えて呼吸も荒い。 「古泉君、大丈……」 思わず後ずさりしてしまった。 古泉君の腕が、ところどころカビのように黒くなっているのが見えた。 「こ、古泉君?」 もう、古泉君は古泉君ではなくなっていた。 「亜阿あああぁ唖あああああああああ!!」 古泉君は意味不明な言葉を叫ぶと持っていた鉄パイプであたしを殴りにかかった。 あたしはなんとか避けたけど、古泉君はまだあたしを狙っていた。 走って逃げたけど、向こうも走ってくる、逃げるのは無理みたい。 振りかぶった隙に鉄パイプを奪い取ることには成功したけど、古泉君は素手での攻撃を止めない。何度も何度も掴み掛ろうとする。 「ちょっと…………やめ……て……」 「ぁぁぁぁぁぁぁ………………あはははははは……!」 古泉君があたしの首を締めようとしてくる。あたしはポケットから拳銃を取り出した。古泉君を突き飛ばしてその隙に距離をおき、構えた。 「ごめんなさい!」 拳銃の弾は、古泉君の頭を貫いた。糸が切れた操り人形のように倒れ、もう動かなかった。 「古泉君……何で……?」 なんでさっきまで味方だったのに突然こうなったの? しばらくして落ち着きを取り戻してから、古泉君の服のポケットからショットガンの弾を取り出す。 その時、何かが光っているのが見えた。古泉君の首に紐に通された鍵がかかっていた。 鍵には「体育館」と書いてある小さな紙が貼ってあった。 *** 痛い……? 寂しい……? 怖い……? 様々なエラーが発生し、私は歩みを止めた。 理解不能、私にはそのような「感情」など……。 では、どうして呼吸が乱れている? どうして過度に背後を警戒する? どうして前進を躊躇う? どうして? それらの自問に答える事が出来なかった。 幾度となく殲滅させた筈のクリーチャーが再び現れた。彼らは執拗に私を喰らおうとやってくる。 それに対して、箒を分解して金属製のパイプのみにしたものを応急的な武器としているが、簡単に折れてしまいもう箒の残りは少ない。持久戦になればこちらの劣勢は明らか。 早急に新たな戦法を練らなければならない、そう思った時だった。 机の上に、いつの間にか機関銃が置いてあるのが視界に入った。 それを手に取った瞬間、メッセージを受信した。 『私達に出来るのはこれ位だけど、これで思いっきりやっちゃいなさい!』 「朝倉涼子……」 統合思念体の干渉はこれが精一杯のようだ。しかし……、 「充分」 私はその機関銃を手にすると、向かってくるクリ―チャ―を飛び越えて走った。 この裏世界はゲームではない。 たとえチートと言われようと構わない。 あらゆる手段を尽くして、この世界を終わらせる。 *** しばらく目を閉じていた喜緑さんが目を開けた。 「裏世界の観測が可能になりました」 待ちに待った知らせだった。ここに来て数時間ずっと気になっていたことをぶつける。 「ハルヒは、長門はどうなってるんですか!?」 「現在は二人共に大丈夫のようです。しかし、裏世界ではキョンさん、古泉さん、朝比奈さんは死んでいます」 「なんだって……?」 「あくまでもあの空間は仮想のものであり、そっくりにコピーしたものです。しかし、世界が入れ替わった場合はそれが現実となり、その時にはあなた方は消えてしまいます」 俺達三人は固まってしまった。 十数秒たってから、その静寂を破るように、朝比奈さんが消えそうな声で言った。 「消えちゃうんですか……」 「……くぅっ……」 ハルヒがまた苦しそうな声をを漏らした。 自分に何もしてやれないことに腹が立つ。俺達はハルヒに触れることすら許されない。接触すると相手に何かされる懸念があると言う。 目の前で苦しそうに顔を歪めながら眠っているハルヒを見てやることしか出来ない。 頼む、頼むから、無事に目覚めてくれ……。 俺達には祈ることしか出来なかった。 *** 体育館 「やっと来たのね」 古泉君の持っていた鍵で扉をあけると、体育館で待っていたのは予想通りアイツだった。 ここも照明は機能してないけど、霧がわずかな明かりとなってアイツの顔を照らしていた。 ここに来るまでに、アイツの正体はなんとなく分かっていた。 アイツの声は聞いたことがなかった。何故なら、それが自分の声だったから。 「アンタがこの世界のあたしなの?」 「そう、だったら何?」 「何でこんな事をしたの」 「この世界は唯のコピー、いつかは消される運命にある。それが気に入らないの。だから神の力でこの世界と貴方の世界を入れ替えてこの世界を本物にするの。みんな、神を生み出すのに必要な犠牲だったのよ」 神……? 「紹介するね、これがこの世界の神よ」 暗くて気付かなかったけど、アイツの隣に巨大な化け物がいた。 あたしが想像する神は、宗教とかそんなの抜きでももっと綺麗なものだった。 けど、目の前に現れた神は、とても神とは呼べないものだった。 5メートルはあろう神だという生物は、人の形はしているがひどく痩せていて、やはり血まみれだった。 「神は絶対的な存在よ、全てを支配するの。だから、人間は神にはなれないの」 アイツが話を区切る度に静まり返る体育館。「神」がこちらを見ている。その視線を受けたあたしは一歩も動くことが出来なかった。 「この神はまだまだ未熟だから、憎悪という感情が足りないの、だから貴方が神に必要な生け贄に選ばれた。そんな貴方がちょっとでも強力になってもらう為にあの男を殺したの」 あたしの怒りを増すためだけにキョンを殺したなんて……。 でもあたしは何も言えなかった。それに対して怒れば相手の思うつぼだし、こんな魔物の生け贄に選ばれたことがショックだった。 「神に逆らうことは許さない。例えあたしでもね」 突然、「神」はアイツを手にとり、じっくりと舐めるように眺めていた。 「あら、神は貴方よりあたしを先に欲しいみたいね」 「な、何言ってるの? アンタも殺されるのよ」 「いいえ、光栄なことよ。神のヴィクティムになるのだから……」 神は我慢できなくなったのか、突然そいつをまるでスナック菓子のように喰らいついた。 アイツの身体が噛み切られて……。これ以上言わせないで。 「う……わ……………………」 あたしはとっさに目を瞑り、耳を押さえた。それでも骨の砕けるような嫌な音が響いていた。 しばらくして音がなくなった。 どうやら食事が終わったらしいので目を開けるた。「神」は血をぼたぼたと垂らしながらあたしを見ている。 次に喰われるのはあたし。 アイツへの復讐は出来なかった。でも、この「神」とやらをなんとかしないと、この世界は終わらない。あたしは、ショットガンを構えた。 「くたばりなさい!!」 引金を引いた瞬間、強い衝撃で肩に痛みが走った。 あたしのような体格では、反動の大きなショットガンは身体に負担がかかることは百も承知。 でも、これは遠距離からでもダメージを与えられる数少ない武器だから、それくらいは我慢。 肩の痛みを堪え、次々と弾をこめては頭を狙って撃ち続けた。 ダメージがあったのか、「神」は呻き声を上げている。 「やったかしら」 油断してしまった。次の瞬間、その長い腕でなぎ払ってきた。 避けようとすることすらできなかったあたしの身体は宙に浮き、十数メートル飛ばされて叩きつけられた。 何とかして立ち上がったけれど、全身が打撲で痛い。ショットガンもどこかに飛んでいってしまった。こんなに暗い中ではすぐには見つからないから諦めるしかない。 「いっ……たいじゃない………………!」 あたしはふらつきながらも再び「神」と向き合い、拳銃を撃ちながらショットガンを探した。 でも「神」は怯むことなく迫ってきて、またその腕に弾き飛ばされた。 「ぅう……」 床に叩きつけられたときに頭を強く打ってしまい、立ち上がることが出来なくなっていた。 拳銃も暗闇の中に消えてしまった。 近づいてくる「神」から逃げようと痛む四肢を必死に動かして床を這ったけど、すぐに追いつかれてしまった。 あたしはとうとう「神」の手で押さえ付けられてしまった。腰には日本刀があるけど、激しい痛みで手が動かなくなっていた。 血でべとべとの「神」の手に圧縮される気分は最悪だった。 苦しい、息が出来ない。こんな化物に食べられるなんて……。 「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 叫んでもここには誰もいないから無駄なことは知ってる。けども、最後までこいつに抗っていたかった。 その時、「神」の荒い呼吸に混じって、誰かの足音が聞こえてきた。 「させない」 ……有希!? 銃声が絶え間なく響いていた。「神」はたまらず悲鳴を上げてのけぞり、あたしはなんとか手から解放されたた。 視界が開けて、音のする方向を見ると有希がマシンガンを撃ち続けているのが見えた。 何十発撃っただろう、「神」は遂に倒れた。それでも有希は「神」が完全に動かなくなるまで攻撃をやめなかった。 マシンガンの音が止む。そして、ガシャンという大きな音を立てて床に落とした。 そしてこっちに駆け寄って、あたしの身体を支えて立たせてくれた。 「涼宮ハルヒ」 「有希……、ありがと」 「いい、私も……一人で心細かった……」 あたしと有希は抱き合ったまま、静かに泣いた。 窓から眩しい光が射している。霧が晴れて、青空が見えた。 外に出ると、校舎は相変わらずだったけど、空気はよどみがなく透き通っていた。 太陽が眩しい。あたしと有希は、その光に包まれていった。 *** 涼宮さんが目を覚ましたようです。 状況説明が困難な為、長門さんが隣の病室にいることは涼宮さんには内緒になっています。 「…………」 涼宮さんと同時に目覚めた長門さんは、ぼんやりと自分の手を見つめていました。 「どうしました?」 「大量のエラーが発生している。身体の制御すら上手く出来ない」 彼女の手は震えていました。 「もう大丈夫ですよ」 私はそっと彼女を抱き締めました。彼女は私に顔を埋めていました。おそらく、泣いていたのだと思います。あくまでも推測ですよ。 数分間そのままでいましたが、長門さんが離れました。 「エラーの削除が完了した」 「では、そろそろ涼宮さんの所へ行きましょう。貴方は涼宮さんにプリンを買いに行ったことになっています」 「……分かった」 「では、情報操作を始めますね」 その時、彼女が小さな声でありがとうと言いました。少し恥ずかしそうでしたね。 情報操作により、私以外は今回の事件についての記憶を失い、長門さんは涼宮さんの見舞いに来たことになりました。これは、トラウマと呼ばれる精神状態に陥らない為の救済措置です。 さあ、私はこの病院にはもう用はないので学校に戻りますね。 それでは失礼します。 inspired SILENT HILL 3 おまけ 長門有希がビビりプレーヤーだったら 痛い……? 寂しい……? 怖い……? 様々なエラーが発生し、私は歩みを止めた。 それらのエラーを言語化するならば……、 「帰りたい……」 いっつも助けてくれるパパ(統合思念体)との連絡がとれないから、一人でなんとかするしかない。 でも、この間キョン君に借りたゲームをしたばっかりだから怖さ倍増なの……。 どうしよう、有希泣きそうだよ……。 「こわいよパパ……」 あー来る、こういう所絶対何か来る。ドッキリ要素というものが絶対ある。 こういう時は……、歌を歌おう。 「ある~はれ~たひ~のこt」 ガッシャーン! 突然ドアを突き破ってクリーチャー登場。 「POOOOOOOOOOO! ふっざけんにゃよ! もーやだ! 無理! 終了! 終了!」 私は走りながら思い切り泣いた。いいもん、誰も見てないから……。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんパパァァァァァァァァ~~!!」 MISSION FAILED... おまけ 2 あのEnd マシンガンの音が止む。そして、ガシャンという大きな音を立てて床に落とした。 そしてこっちに駆け寄って、あたしの身体を支えて立たせてくれた。 「涼宮ハルヒ」 「有希……、ありがと」 「いい、私も……一人で心細かった……」 あたしと有希は抱き合ったまま、静かに泣いた。 突然、窓から眩しい光が射した。 「なにあれ!?」 空中に浮かぶ複数の円盤、それは……、 ま さ に U F O 「有希! UFOよUFO! これは調査しなきゃSOS団の名が廃るわ! あたし達の活動を全世界に広められるチャンスよ!」 あたし達は外に出た。グラウンドに着地していたUFOは合計三機。中から出てきたのは、期待通りの宇宙人! 「ユ、ユニーク(タコさんウインナー……)」 「ねえあなたたち! どこから来たの?」 「 %*#\$@=-@!」 「な、何言ってるのかサッパリね……」 「意思疎通は困難と思われる(おいしそう……)」 「+ |\ ; *// #!」 宇宙人が取り出したのは、光線銃? ビビビビビビビビビ いきなり有希が撃たれて倒れた。有希は痺れて動けない様子だった。 「………………ユニー……ク…………(一口だけでもかじってみたかった……)」 「有希ー! 有希ー! ユニークとか言ってる場合じゃないわよ! アンタ達! 何するのよ!」 「 *#/(^^) $/-!」 すると今度はあたしに光線銃を向けた。 「な、何よ! やめなさ……いやあああああああああああああ!!」 そして動けなくなったあたし達はUFOに乗せられて…… ユニーク(笑)
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このノートに名前を書かれたものは死ぬ と言うノートを死神が人間界に落とし 退屈な天才少女 涼宮ハルヒがノートを拾い、 犯罪者を一掃し、犯罪を世の中から消し、 犯罪のない世の中を築こうとする、 皆からはキラと呼ばれていた しかし、その行く手を弾むもの、 世界の名探偵Sが動き出す、 ハルヒはKを殺すため Sはキラを捕まえるため 天才VS天才の勝負がはじまる。 本編(作者.やべ酉きえたんだ^^;) 第一話 始まり 外伝(下記は編集自由) デスノートででてきた者を置きまくってます _________________________________________________________________________________________________________
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このwikiもどきは、ハルヒスレSSまとめwikiに掲載された『涼宮ハルヒ』シリーズの二次創作物(SS)である、「ハルヒと親父」(オリキャラ全開)シリーズとその周辺的二次創作の物置です。 あまりにも二次創作の域を逸脱してしまってスレに投下し損なったもの、言い訳、後悔、ツール、その他企画物を含みます。 このwikiでのSSは、涼宮家を中心とした日常系おはなしです。 超常的な出来事はほとんど起こりません。SOS団の面々も(すみません)あまり活躍も登場もしません。あしからず。 なお、当サイトはリンクフリーです。「リンクしましたよ」と、お知らせいただくと、こちらからもリンクさせていただきたいと思います。 written by 親父書き 主な登場人物 涼宮ハルヒタイトル・ロールです。原作ではほとんど無敵の彼女ですが、彼女を生み育てた父母はそれに輪をかけて強力かつエキセントリックな人たちなので、ここのSSでは結構辛酸をなめたりします。 キョン原作の語り部です。ハルヒとの関係は、原作よりも進んでいています。本編「ハルヒと親父1〜(今のところ3)」ではさらにその関係が進んでいきます。 (以下がオリジナル・キャラクターです) (涼宮)親父ハルヒの父親です。「親父」「親父さん」と呼ばれ、「お父さん」と呼ぶのはハルヒの母さんだけです。悪ふざけが大好きで自分が楽しいことを第一義に置き、口ばかりか様々な能力値も高く、ハルヒたちを悩ませます。但し、自分の妻(ハルヒの母)だけには頭が上がりません。 (ハルヒの母)名前をつけてません。「ハルヒの母」「母さん」と呼ばれます。彼女はハルヒのことを何故か「ハル」と呼びます。病弱で体力がない設定ですが、ハルヒにその美貌と才能を与えただけあって、高いパフォーマンスな人です。 ハルヒの両親を考える場合、「とっても普通の人」か、さもなくば「容姿端麗、頭脳明晰、万能タイプでぶっ飛んだ性格」と両極端に考えましたが、後者の線で押せるところまで押していったのが、このシリーズです。 個人的には、親父を交えた各キャラクターと掛け合い(トーク)が気に入っているシリーズです。 少しでも楽しんで頂ければ幸いです。 内容の雑駁な有様 トップページ このwikiの表紙です。あらゆる内容がここからアクセスできます。 今日のおすすめ 多分200個くらいある、このサイトのSSをランダムに表示します。メニューからご利用ください。お気に入りが見つかるまで、何度でもどうぞ。 作品リスト このwikiにあるSS(二次創作物)のリストです。 「ハルヒと親父」と頭についているのがSSです。 * メインライン・ストーリー (←これが本編にあたります) * サブライン・ストーリー1 * サブライン・ストーリー2 (←ハルヒが高校生で妊娠、二人の奮戦がはじまります) * サイド・サイド・ストーリー * ビター・ストーリー (←バツイチキョンと連れ子アキが登場します) * 主としてハルキョン * 親父もしくは母さんメイン * 小さいハルヒと親父 * 小品 * ハルヒと親父シリーズ以外(親父シリーズ以外のSSも載せ始めました) などと分類されています。 他に * 企画室 * あるSS書きの七つ道具(増補版) * 親父書きがSSを読む * そのとき親父書きは何を思ったか? などがあります。 親父語録保管庫 トップページの巻頭に(なるだけ)毎日更新される「親父の放言」のバックナンバーです。 あるSS書きの七つ道具 SSのみならず創作系に役に立つかもしれない道具をいろいろ紹介しています。 密かに本格仕様になりつつあることに、親父書きすら驚愕しつつあるコーナーです。 親父書きがSSを読む SS書きの親父書きが、自分の勉強として、人様のSSをテーマ別に読んでいくコーナーです。 そのとき親父書きは何を思ったか? とうとう作ってしまいました、作者言い訳のページです。 基本的には作品ごとに「何を考えてこんなもの書いたのか」を語り(騙り?)ます。 はじめての方へ このページです。ようこそお越し下さいました。 掲示板/足跡帳 おっかなびっくり設置してみました。 コメントなど、残していただけると幸いです。
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涼宮ハルヒの約束IVまでもマップ選択画面ではハルヒを優先的に選択しておく。 もちろん、ストーリーが進まなくなるほど選ぶのはタブー。 涼宮ハルヒの約束IV 午前に、ハルヒとのSOS会話を発生させ、エンブレムを出す。 ↓ 午後に、古泉との、難易度は普通にやれよで、ミニゲーム渚のビーチバレーで勝つ。 ↓ 最後に、夜にハルヒと会話して終了。 涼宮ハルヒの約束V 朝の古泉との会話で、信じるを選ぶ。 ↓ 午前に、ハルヒとのSOS会話を発生させ、エンブレムで終わらせる。 ↓ 午後と夜は、誰を選んでもいいが、シャミセンと話す場合、SOS会話あり。 ↓ 深夜のみくるとの会話での選択肢では、いきましょうを選ぶ。 涼宮ハルヒの約束VI 午前の古泉との会話で、古泉を止めるを選ぶ。 ↓ 午後はハルヒと、夜はみくるとの会話のみ。 涼宮ハルヒの約束VII 朝での会話では、団員として恥ずべきことだわを選択。 ↓ 午前は、ハルヒとの会話のみ。 ↓ 夜のハルヒとの会話。本物と偽者のハルヒとSOS会話を行う。 会話から違いを見つけ、偽者を見破る。 もし、失敗すると、基本的にはバッドエンド。 そして、エンディング。
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プロローグ ある日の午前十一時半、倦怠生活に身をやつしている身分の俺には一日のうちでもっとも夢膨らむ楽しい時間。このところ妙に開放感を感じているのは、きっと束縛感の塊のようなやつが俺から少なくとも十メートル半径にいないからだろう。精神衛生的にも胃腸の機能的にも正常らしい俺は、さて今日はなにを食おうかとあれこれ思案していた。その矢先に机の上の内線が鳴った。無視して昼飯に出かけるにはまだ二十分ほど早いので仕方なく受話器を取ると総務部からの転送だった。お客様からお電話よ、と先輩のお姉さまがおっしゃった。俺を名指しで外線?先物取引のセールスとかじゃないだろうな。 「キョン、今日お昼ご飯おごりなさい」 あいつ俺に電話するのに代表にかけやがったのか。 「職場に直接かけてくんな。携帯にメールでもすりゃいいだろ」 「いいじゃないの。あんたがどんな人たちと働いてるか知りたかったのよ」 俺の周辺に涼宮教を広めないでくれ。 「俺とお前の職場じゃ昼飯を食うには離れすぎてるだろ」 「じゃあ、北口駅前でね」 そう言っていきなり切りやがった。相変わらずこっちの都合なんてないんだよなぁこいつは。 「すいません、外で昼飯食って打ち合わせに直行します。三時ごろ戻ります」 俺は戻りが遅れることを予想して上司に言った。いちおう取引先に会うカモフラージュのためにカバンを抱えて出た。中身は新聞しか入ってないんだが。 「キョン!こっちよこっち」 北口駅を出るとハルヒが大声で叫びながらハンドバッグを振り回していた。俺は横を向いて他人のフリ、他人のフリ。 「恥ずかしいなまったく」 「この近くにイタリア人がやってるフランス風ニカラグア料理の店が開いたのよ」 どんな料理だそれは。 ハルヒにつれて行かれた開店したばかりという瀟洒な料理店は意外に混んでいた。ニカラグアがどんな国かは知らないが、まあ昼時だからそれなりに客も入っているようだ。そのへんのOLが着る地味なフォーマルスーツに身を包んだハルヒはズカズカと店の中に入り込み、ウェイターが案内しようとするのも構わずいちばん見晴らしのよさそうな窓際の丸テーブルにどんと腰をおろした。 「あーあ。ほんと、退屈」 ハルヒがこれを言い出すのは危険信号だ。俺はパブロフの条件反射的に身構えた。何も言わない、何も言うまいぞ。 「あんたさぁ、」 腕を組んでテーブルに伏したままハルヒが呟いた。 「なんだ」 「仕事、楽しい?」 キター!!これはまずい展開だぞ。話の行方を考えて返事をしなくては。ハルヒがこういう話の振り方をするとき、不用意な俺の発言でとんでもない事件に巻き込まれることが歴史を通じて証明されている。 「半年だし、まあやっとペースに乗ったところって感じかな」 「あたしは退屈。こんな生活が退職するまで続くかと思うと憂鬱になるわ」 「定年までいることはないさ。結婚するとか、転職するとか、資格を取ってキャリアを重ねるとか、いろいろあるだろ」 「あんた、有希と結婚したとして、こんな生活が延々続くことに耐えられるの?」 「生活は安定するさ」 いや、今なんか問題発言がなかったかハルヒ。 「あたしは耐えられないわ。人に使われて歯車を演じるだけの人生なんて」 人、それを“歯車にさえなれない”と表現するんだが。そんなことをハルヒに向かって言ったら牙をむいて頭ごと食われそうなのでやめとこう。 「貯金して海外旅行でも行ったらどうだ」 「毎年それでリフレッシュするわけ?帰ってきて自分が飼われてるのを実感するだけよ」 「うーん……。お前を満足させられる会社ってのが、そもそもあるのかどうか分からん」 それ以上会話が続かず、俺たちはしばらく黙っていた。ハルヒは眠そうにニカラグア産コーヒーをすすった。もしかしたら俺たちはこのまま、一生社会のしがらみの流れに身を任せて生きていくしかないんじゃないか。そう思わせるような雰囲気が、俺とハルヒの半径二メートルくらいを充たした。だがまあ、それも悪くはないと思う。今までハルヒに付き合っていろいろやってきたが、もうお遊びは終わりだ。 俺は倦怠感に身をゆだね、持ってきた新聞を広げて壁を作った。ゆっくりしよう、どうせ戻りは三時だし。 「気がついた!」 ハルヒの声が店内に響き渡わたり、俺は新聞を落とした。突然俺のネクタイを締め上げた。ずいぶん前に似たようなシーンに遭遇した覚えがあるぞ。 「く、苦しい離せ」 「どうしてこんな簡単なことに気づかなかったのかしら」 「何に気づいたんだ」 「自分で作ればいいのよ!」 「なにをだ」 「会社よ会社」 うわ、まじ、やめて。ハルヒは携帯電話に向かって怒鳴った。 「全員集合!」 1章へ
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涼宮ハルヒのデリート 誤解なんてちょっとした出来事である。 まさかそんなことで自分が消えるなんて夢にも思わなかっただろう。 キョン「あと三日か・・・。」 キョンつまり俺は今、ベッドの上で身を伏せながらつぶやいた。今を生きることで精一杯である。 なぜ今俺がこんなことをしているのかというと、四日前に遡ることになる。 ハルヒ「キョンのやつ何時まで、団長様を待たせる気なのかしら?」 いつもの集合場所にいつもと変わらない様子で待っているメンバーたち。 団長の話を聞いた古泉が携帯のサブディスプレイをみる。 古泉「まだ時間まで五分あります。」 と、団長に伝える。 ハルヒ「おごりの別に、罰でも考えておこうかしら。」 っと言ってSOS団のメンバーは黙り込んだ。誰一人として口を開こうとしない。その沈黙を破ったのは、ベタな携帯の着信音だった。 ハルヒ「あとどれぐらいで着くの?団長を待たせたんだから・・・」 っと言われ「一方的に電話をきった。ベタな展開だったら俺が切るのだが、なにしろ相手があのハルヒだから仕方がない。 かわりに古泉に電話をかけた。 古泉「僕に電話とは、あなたも罪な人ですね。涼宮さんが嫉妬しますよ。」 ウザイ、何勘違いしてんだこのホモ男。 古泉「冗談です。僕に電話をかけたぐらいですから、何か理由があるのでしょう?」 やっぱりコイツと話すのは少し気が引けるな。 キョン「今日は、急用があるから探索にはいけないとハルヒに伝えてくれ。」 古泉「その用とは?何の事ですか?」 キョン「どうしても言わなくてはいけないのか?」 古泉「・・・。まあ別にいいでしょう。あなたの休日まで追及はしません。」 キョン「じゃ、頼むぜ。」 電話のやり取りを終えた古泉はハルヒに用を伝えた。 ハルヒ「仕方がないわね。じゃあ、今日は二人のペアで北と、南に分かれて不思議を探しましょう。」 ~ハルヒ視点~ ハルヒとペアになった、いやなってしまった朝比奈さんは午前中ずっとハルヒの不機嫌オーラを感じ、おびえながらハルヒの後についていったそうだ。 午前中の散策が終わりいつもの場所へ向かう途中朝比奈さんがあるものを発見してしまった。 みくる「あれって、キョンくんじゃないですか~~?」 ハルヒは朝比奈さんの指す方向に素早く振り向いた。 ハルヒ「散策をサボっておいて、何をやってんのかしら?」 しばらくハルヒが何かを考えていると思うと、頭の上の電球が光った。 ハルヒ「キョンを尾行するわよ、みくるちゃん。キョンの休んだ理由がわかるし、不思議なところへいけるかも知れないし。」 みくる「で、でも~~、長門さんと、古泉くんのことはどうするんですか~~?」 ハルヒ「そんなの後で電話しておけばいいじゃない。」 っと言って、彼の尾行を始めた。何度かみくるちゃんから「やめましょうよ~~。」っと言われたがすべて無視した。 彼の行き先はいつもの駅から一駅離れたところだった。 ハルヒ「なんでわざわざこんなところにくるのかしら・・・。」 みくる「やっぱり、やめませんか~?キョンくんには彼なりの事情があると・・・。」 言いかけていた彼女の口をふさいだのは、ハルヒの手だった。 みくる「何するんですか~?」 ハルヒ「誰かに手を振っているわ。ここからじゃよく見えないから別の場所へ移動しましょう。」 っといってハルヒは朝比奈みくるの手をとり移動した。 みくる「あれって、女の人じゃないですか~?」 ハルヒの目に移ったのは、キョンが親しげにその女性と話しているところだった。 そして、気づいたらそこから走って逃げ出しているところだった。 走るのをやめて歩いていると、後からみくるちゃんが追いついてきた。 みくる「きっと彼女じゃないと、思いますよ・・・。」 ハルヒ「あったりまえじゃない、あのキョンに彼女ができるわけないじゃない。ただ少し暗くなってきたから早く帰りたいなと思って・・・。」 わかりやすい嘘をついてしまったと思い、すこし悔しがった。駅あたりで二人が別れた。 ハルヒの後姿はどこか悲しげな表情にみえたそうだ。 ~キョン視点~ 妹のダイブによって起こされた俺は、いつもの強制ハイキングコースを心行くまで楽しんでいた。 学校にいく間、谷口のナンパ話を聞かされた。まったく飽きないやつだ。 谷口「でだな、やっぱりゲーセンのやつらを狙うのはよくなくてでなあ・・・。」 キョン「お前のそのナンパ話はこうで96回目だ。」 っと口を挟む。まったく朝から暑苦しいやつだ。熱心に語ってきやがる。 谷口「そういや、お前なんで土曜日の探索に行かなかったんだ?」 キョン「・・・。なんで、お前が知ってる?」 谷口「ギクッ!!!忘れてくれ・・・。」 そんな話をしているとすぐに学校に着いた。靴を履き替え教室に向かうと、何から話そうか考えた。誰にって、そりゃハルヒにきまってんだろ? 絶対追求してくるに違いない。 しかし、予想に反してハルヒは何を言ってこなかった。それどころか、教室に入ってきた俺をまるで何もいないかのような反応を見せた。 キョン「ど、土曜はすまなかったな。急に休んだりなんかして・・・。」 しかし、ハルヒは何の反応もしない。気まずい、ククラス全体が注目してる。 キョン「休んだ事を怒ってんのか?」 ハルヒ「・・・・・・。」 無反応のハルヒに気まずさを感じていたら、チャイムがなりホームルームが始まった。 まったく、休んだぐらいでそんなに怒るかよ・・・。 結局午前中はハルヒと何も話さず、不機嫌オーラを受け続けていた。 昼休みは教室を抜け出しどこかへいってしまった。 谷口「お前、涼宮になんかしたか?」 キョン「いや、何もしていない。何で怒っているか知りたいぐらいだ。」 本当に何を怒っているんだろうな、ハルヒのやつ。 そして授業の終わりに二人のムードに耐え切れなくなった谷口が、あろうことかハルヒに話しかけてしまった。 ハルヒ「何よ谷口。あんた宇宙人でも見たの?」 じとっとした目で、谷口を睨む。 谷口「キョンと喧嘩するのはいいが、クラスのムードまで暗くするな!」 っと強気で言った。ああ、谷口、お前死んだな。相手を考えろ、相手を。 しかし返ってきた返答は、最悪なものだった。 ハルヒ「キョンって、誰?」 教室が完全に凍りついた。その中を凍らせた原因のハルヒが通りすぎていった。 マジかよ? なにかあったかも知れんと思い、逸早く部室へ向かった。 キョン「長門!これは一体どういうことなんだ?」 俺は部室の隅で静かに本を読むインターフェイスに問いだした。しかしまた返って来た返答は最悪だった。 長門「あなたが悪い。」 ・・・・。俺は言葉を失った。一体何をしたんだというのか。あの長門からこの言葉を言われると正直つらい。 すると後ろから古泉が入ってきた。 キョン「お前ならわかるか?俺がハルヒから無視されている理由。」 よく考えてみれば、長門がああ言っているのだから古泉に聞いても仕方がなかった。 ふわりと自分の体が倒れるのを感じ、殴られたとわかった。我ながら格好悪い。 古泉「あなたがそんな人だったとは、失望しました。涼宮さんが無視するのもよくわかります。」 一体どういうことだ。何が起こっている?これもまた異世界なのか? とりあえずこの日は家に帰った。あんなことを言われてあの場にいれるほど、俺も狂っちゃいない。 一体何が悪いのか考えているうちに眠りに入った。 朝だ・・・。妹のプレスを食らう前に起きた。とりあえず再びハルヒに誤っておこうと思い学校へ向かった。 向かう途中ずっと考えていた。そもそも俺をいないものだと言うほど嫌っているのに、どうやって誤ればいいのか。 それに理由もわかっていない。・・・そうだ、朝比奈さんに聞こう。 昼放課に朝比奈さんを呼び出した。 キョン「あの、俺って何かハルヒに悪い事いしましたか?」 真剣な口調で話す。彼女なら何か知っているのだろうか? その言葉に驚いたような様子をみせ、真剣な顔つきで話始めた。 みくる「あの、始めに言っておきます・・・。」 キョン「はい?」 みくる「ごめんなさい。」 パ~ンという音が響いた。そう、ビンタされた。そして朝比奈さんはどこかへいってしまった。 あの、朝比奈さんに殴られたのは相当ショックだった。 結局午後の授業にはでずに欠席した。この日は何もかもにやる気がでず。ベットで眠ることにした。 朝、自分の体の異変に気づいた。 -あと3日で自分は消える 何でわかるかって?分かってしまうからしょうがない。これしかないな。 今の状況に絶望した自分は学校を休んだ。だってあと三日で死ぬとわかっていて何をすればいいかなんかわからん。 夕方、古泉が家を訪ねてきた。しぶしぶ話を聞くことにする。 古泉「いい加減にしてください。とにかく明日、涼宮さんに謝る事です。何度閉鎖空間を潰したことか・・・」 キョン「・・・。俺が何をしたっていうんだ?」 古泉「とぼける気ですね。まあ、いいでしょう、言ってさしあげますよ。先週の散策あなたは休んだ。そしてわざわざ僕たちから離れるようにして彼女に会った。それに対して涼宮さんは失望しているのですよ。」 キョン「待て!それは・・・。」 古泉「ともかく、明日は学校に来て謝ってください。それで済むことですから。」 俺は終始まともな話ができず、家に戻った。 「あと三日か。なんとしてでも・・・」 彼女に会っただと。とんだ誤解だ! 次の日は一日中ハルヒにかけた。全て無視されて、だんだん自分が消えていくのを感じ、孤独感に襲われた。 手紙をつかってみたりもしたが、やはり無視された。 ・・・。一体全体どうなっているんだ? 帰り際、しかたなく古泉と少し話をすることにした。 キョン「全て無視されている。もう俺が消えたみたいに。」 古泉「どういうことです?もう、とは?」 キョン「古泉、俺はあと二日、いや明日いっぱいまでしか生きられない。」 古泉「・・・。なんで分かるのですか?」 キョン「分かってしまうのだからしょうがない。っということだ。」 古泉「・・・なるほど、どうですか。僕の憶測ですが・・・、土曜にあなたが彼女にあったことが原因でしょう。」 キョン「そのことなんだがな・・。実はそれお袋なんだ。俺の。」 古泉「!?・・・それが本当ならものすごい間違いですね・・。」 キョン「まあ、俺の親は若いときに俺を生んだからな。」 古泉「で、その誤解により、あなたに失望し悲しんだ。あなたがいなければ悲しまなかったのに、とでも考えたのでしょう。」 キョン「だったら、すでに消えているべきじゃないのか?」 古泉「そうですね、あなたに謝ってほしかったのではないんですか?」 キョン「・・・(違うだろ)。まあそんなことよりこれからどうするかだな。」 古泉「そうですね。今のままでは、この世界にも失望して改変されかねませんからね。」 キョン「しかし、俺の書いたものまで目にはいらないとなると、どうすればいいんだ?」 古泉「分かりません。でも、あなたのやる事を信じたいと思います。」 いつまでも本当にクサいやつだな。しかも顔が近い、キモイ。どけろ 古泉「僕にできることがあれば、何でも協力しますよ、親友として。」 キョン「わかった。」 っといって別れたのはいいがさっぱりどうしたらいいのかわからん。 このままでは、本当に消えてしまう。何かいい方法はないのか? 長門に頼るか?いや、今回は自分で考えるべきか? 人間はこういう大事な日に限ってすぐに寝てしまうものだ。 次の日結局何も浮かばず、半日をすごしてしまう。 今いるのは部室だ。ここでなんとかしなければ、消えてしまう。 ふいに長門が何か語ってきた。 長門「あなたはもう答えを知っているはず。答えは過去にあり、現在に関係する。」 そのことを信じていいんだな、長門。・・・。 最後になるかもしれない部活は、ハルヒに俺が認識されないまま終わった。 帰り際、あるひとつの答えにいきついた。唯一の接触できるチャンス、そして最後の切り札。 キョン「古泉、親友としてのお前にひとつ頼みがある。」 古泉「なんでしょう?できる限りのことをいたしますよ。」 キョン「それはだなぁ、夜に東中にきてくれと手紙にかき、渡しといてくれ。」 古泉「なんのことだか、分かりませんが、それが望みならやっときます。」 そう答えは今日という日つまり七夕。答えは三年前。 東中に着くとハルヒをベンチで待つ。懐かしいな、この場所。丁度暗く顔をしっかりと見えない。 しばらくするとフェンスを乗り越え、ハルヒがやってきた。 ハルヒ「やっぱり、ジョン・スミスだったのね。」 そう、最後の切り札はこれだ。そして予想どうり接触することができた。 ジョン「どうだ、高校は?」 するとハルヒ今までの活動を話始めた。 ハルヒ「やっぱり、宇宙人はみあたらないわね。でも、SOS団っていうね・・・。」 俺も、(俺は話から消えていたが)今までの活動を思い出していた。 ハルヒ「ジョン泣いているの?」 俺の顔には涙が流れていたらしい。あと十五分の命だ。 ハルヒ「私何か大事なことを忘れている気がする。」 ふいにハルヒが言ってきた。思い出してもらうチャンスかもしれない。 ジョン「今からいうことを真剣に聞いてくれ。」 ハルヒはキョトンとした顔だったが、気にせず話をつづける。 キョン「昔、キョンと呼ばれていた男がいた。彼は普通の人生に飽きていた。そこに自分と同じ考えの女の子が現れた。 彼女は不思議を追い求めて彼を振り回した。しかし彼はそれを迷惑と思わず、むしろ自分の人生が楽しくなるのを感じた。・・・」 もう涙が止まることはない。 ジョン「しかし、ちょっとした誤解で二人はもう二度と会わなくなってしまった。」 ハルヒ「それがジョンあなたなの?」 ジョン「ああ、SOS団か・・・楽しかったな。」 嘘と真実がまざりメチャクチャになってきた。 ハルヒ「わたしが忘れていることって、まさか?」 ばらばらだったピースが合わさった。しかしもう時間がない。 ハルヒ「女の子はわたしなのね。」 キョン「ああ、誤解が解けないのが残念だったな。」 ハルヒ「・・・。」 キョン「ハルヒ、約束してくれ。俺がいなくてもこの世界に失望しないことを。」 ハルヒ「・・・、わかった。って、何その死ぬ前みたいな言葉。それに体が・・・」 体が消えてきた。くそ!時間がない。 キョン「じゃあな、ハルヒ。消える前にお前のポニーテールが見たかった・・・。」 こうして俺、キョンはこの世界から消えていった。 思えば、普通の高校生として生きていくよりはよかったんじゃないのかと、思えた。 その後ハルヒは古泉から誤解について説明された。 俺が消えた世界では、俺の体は残っていないので失踪っということになっている。 妹よ、兄が消えた事に悲しんでいるか? 世界が改変されることが起こらず、いやそれどころか閉鎖空間すら発生しなかったそうだ。 SOS団は今も健在しており、ポニーテールの団長様はなんとかやっているようだ。 ハルヒ「・・・。あれから一ヶ月ね。本当にどこへいったのかしら・・・。」 ハルヒが俺の席をみてつぶやく。 みくる「・・・・。きっと帰ってきますよ。」 ハルヒ「でも、目の前で消えていくのを見たのよ!わたしだって信じたい、帰ってくると。」 古泉「いい加減にしてください!] 急に叫んだ古泉に、二人は意表をつかれた。 古泉「そんなこといっていたら、彼が帰りづらいじゃないですか。」 部室が静まりかえった。・・・・。どういうことだ? 古泉「実はですね。先日警察に身柄を確保されましてね・・・。」 っといって、ハルヒに新聞を渡す。確かに新聞には俺の写真がうつっている。 古泉「いると信じなくては、いるものもいあくなってしまいますよ。」 するとハルヒの顔にいつもの120ワットの笑顔が戻った。 次の日、俺はベットの上で横になっていた。 なぜ俺がこの世界に戻ったのかというと簡単なハルヒの思い込みだ。 まったく便利な能力だな。まあそれのせいで、消えていたわけだが・・・。 さてまずは最初に一ヶ月の幽霊生活。これでもハルヒ話してやろうかな。
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雨音がどこからか聞こえる。 気がつくとわたしは部室にいた。 「あれ?何でわたしここにいるの?」 「おれが呼んだんだ」 キョンの声がした。 「ハルヒ。」 「な、、、何よ」 「実はおれショートボブ萌えなんだ。おまえがショートボブにしないならおれは長門と付き合う。」 「何言ってるのよ!」 あのときわたしにポニーテールが好きって言ったの、あんたじゃないの! 「あいにくだけど、今のわたしは有希みたいなダサい髪型にするつもりはないわ。」 そのとき後ろに気配を感じた。振り返ると有希が立っていた。 「………情報の初期化を行う。あなたの髪の毛が二度と生えてこないように細胞分裂を停止させる」 「そうしてくれ。」 キョンがそんなこと言うわけ無い!でもキョンは続けて言った。 「じゃあな」 そんな。。。。キョン。。。。。 気がつくと私は部室で眠っていた。肩にはキョンのブレザー。 なんだ。夢か。。。。 それは雨の降る寒い日のことだった。 「没ね」 「そ、そんなぁ。。。。。。」 朝比奈さんは崩れ落ちた。
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―――― 二日目 3 ―― 「・・・。どうしてそんなにやさしいの?」 「・・・え?」 「キョンは、やさしすぎるの。わたしだけじゃない。有希にも、みくるちゃんにも、阪 中さんにだって・・・」 俺は・・・、それほどまでに優しかっただろうか。 「キョンが私に優しくしてくるれるたびにね、あたし思ったの。この人はわたしのこと を大切に思ってくれているんだって。でもね、みんなといると思い知らされるの。あぁ、 私だけじゃないんだって。キョンにとって特別なのはあたしだけじゃないんだ、ってね」 「・・・・。」 俺はハルヒの告白を黙って聞くことしかできなかった。俺はハルヒを特別だと思った ことがあっただろうか。胸に手を当てて考えてみる。 「ハルヒ、いいか?よく聞け。俺にとってお前だけが特別な存在なんだ。」 俺にとってハルヒは特別だ。その気持ちにウソはない。しかし、俺にとっての特別と はなんなんだろうか。俺はその答えを見つけられないでいた。 「あたしはね、アンタのことが特別なのよ!ううん、特別なんてものじゃない。あたし にとってはね、キョンが全部なの。」 ハルヒは俺の心を読んだかのように言った。それが・・・、答えなんだ。 「あたしは、あんたが、キョンが好k・・・・!」 俺はハルヒを抱きしめていた。無意識なんかじゃない。俺はハルヒのことを抱きしめ たくて抱きしめているんだ。特別ってこういうことだな。 「言わなくてもいい。これが俺の気持ちだ。」 「・・・・」 「好きだ・・・。ハルヒ・・・」 うわ、ハルヒの体・・・。思ったより細いな。ずっとこのままがいいな・・・。なぁ ハルヒ。 「・・・言ったわね?」 「・・・・え?」 ハルヒは俺からぱっと離れるとにやっと笑った。なんかとてもすごくいやな予感がす るんだけどな。 「今、私のこと好きって言ったわね。」 「う・・・・。言ったが・・・。それがどうかしたか?」 「私の勝ちね」 ハルヒは勝ち誇って言い放った。 「恋愛っていう病気はね、かかったものの負けなのよ?」 あぁ、すべてを今すぐ取り消したい。なんなんだろう。俺はこんな女を好きになって しまったというのか?あぁ、今すぐ首をつりたい。それにしてもこの女はこの非常事態 時に俺をはめたというのか。信じられん。あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。 「ようやく見つけましたよ。無事でしたか。涼宮さん」 おい、古泉。俺の心配は無しか。 「あなたが無事なのは喜ばしいことです。あなたに死なれてしまっては涼宮さんの精神 がどうなってしまうか想像もできません。お怪我がなくて幸いです。」 当然だろうな、こいつはこういう男だ。俺の心配なんざちっともしちゃぁいねぇ。 「いえ、とても心配でしたよ。アナr」 「みんなはどうなったんだ?」 ここは遮らざるを得まい。まさかみんなの前でそれを言うとはな。それにしてもあい も変わらずトンでもねぇことをさらっと言うやつだ。残念だが俺の体はハルヒのm ・・・。何言ってんだ俺。 「何人かお怪我をされた人がいるそうですが軽傷だそうで、空港が使用可能になり次第 帰国するという話でしたよ。」 それはよかった。まぁこれもある意味で一生忘れられない修学旅行だな。それにハル ヒと・・・。 「コラ、エロキョン。ニヤつくな」 必死に笑いをこらえながら突っ込むハルヒ。ホントに心の中が読めるんじゃないのか ?コイツは。 「さぁ、お二人さん。早く帰りましょう。先生方や皆さんもお待ちですよ。」 それもそうだな。何はともあれみんなに迷惑をかけるのはいい気がしない。ホテルに 帰るとするか。 幸いにも俺たちの泊まっていたホテルはひどい被害に遭うこともなく使える部屋をか き集めることで俺たちの寝泊りするところは確保できた。市内二つの空港の被害もひど いものではなく中国から航空機が到着次第ここを出発できるらしい。少なくともそれは 明日以降になるわけだ。 やれやれ。それにしても今日は疲れたな。さすがに今日は誰も騒ぐやつはいるまい。 寝るとするか。 ―――― 二日目 Fin―― 三日目
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ハルヒ放送 くど、ひかり、悪者、Asukaで構成されていたラジオ。 ハルヒ⇒くど みくる⇒ひかり キョン⇒Asuka 古泉⇒悪者 長門⇒団員で補充 最近とてもご無沙汰。
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二 章 まあメランコリーはさておき、ハルヒの突拍子もない思いつきにどうしたものか考えあぐねていた。営利目的になれば高校や大学の同好会とは違う。金はからむし、顧客と出資者への責任も生じる。それに社員全員の生活もかかっている。社会的責任、ってやつだ。ハルヒの思いつきだけで会社がやっていける世の中なら、経営コンサルタントなんていらないだろう。なんというかこう、ハルヒも満足する、社員も顧客も満足する、すべてがうまくいく方法はないものか。 長門から晩飯を作ると電話があったので、俺は帰りにマンションに寄ることにした。俺も今回ばかりはうまく切り抜ける案がないので、長門の知恵を借りることにした。 「ハルヒを満足させられるだけの仕事で、四人を養っていくだけのネタがあればいいんだが」 「……事業内容を二つに分ければいい」 「とういと?」 「基本収入を得る事業、実験的な投資事業」 なるほどな。前者が仕事、後者が遊びってわけか。 「後者のタイムマシン云々はハルヒに好きにやらせるとして、前者の基本収入を得る事業だが、なにかいい方法はないか」 「……低コストでなら、ソフトウェアを売るのがいい」 「お前ならさくっと作れるだろうが、学生をやりながらはきついだろ」 「……大丈夫。時間の切り分けをうまく調整する」 「ハルヒのお守りのためにあんまり長門の手間をかけさせたくないんだがな」 「……いい。必要とされるのは、いいこと」 長門の顔に少しだけ微笑が浮かんだ。そう言ってくれるのは嬉しいんだが。 「じゃあ、俺も勉強して手伝うよ。ハルヒと古泉にも手伝わせるから」 とはいっても、ハルヒに今からプログラム言語を勉強しろと俺が言えるかどうか。 「それで、どんなソフトウェアを売るんだ?」 長門はごそごそと薄型ノートパソコンを出してきた。 「……アイデアはある」 長門テクノロジーから生まれた製品のアイデアはいくつかあった。すぐにでも実用化できそうなのは『自律思考型業務支援仮想人格』とか言うらしい。 「どういうもんなんだそれ?」 「……通俗的な用語を使用すれば、人工知能」 長門がとあるプログラムを起動すると、黄色いリボンをした3Dの人形っぽいキャラクタが画面に飛び跳ねた。 『ゆきりんおかえりぃ、元気ぃ?』 「ゆきりんってお前のことか」 「……そ、そう。たまにそう呼ばれる」 『その人だぁれ?ふふっ、もしかしてカレシぃ?』 このキャラクタ、知ってる誰かに非常によく似てるんだが。 「……この子は元はウィルスだった。北高のコンピ研に所属していた頃、コンピュータから抽出して育てた」 「ウィルスって、大丈夫なのか」 「……問題ない。増殖する機能は切ってある」 長門が言うには、この“涼宮ハルヒシミュレータ”は元々ハルヒの情報を栄養源とする人工知能の一種らしい。 「こいつ、自分で考えて喋るのか」 「……プログラムに考えるという機能はない。状況を示す情報に応じて反応しているだけ」 「どうやってこっちの様子が分かるんだ?」 「マイクとカメラからの情報を内部で解析している」 俺はCCDカメラに向かって話し掛けた。 「おいハルヒ、ちょっと見ないうちに小さくなったな」 『うるちゃいわね!でかいだけが能じゃないわょ』 この三頭身だか四頭身だかのミニハルヒはかわいい。パッケージ化しておまけにフィギュアをつけたら売れるぞ。 「……同じコアロジックを利用し、業務支援ソフトを作る」 長門が考えているのは、会社全体の情報から経営分析し、スケジュールとか文書管理などの仕事で必要な手間をすべてやってくれるマルチなプログラムらしい。簡単にいえば社員全員にAI秘書をつけて業務管理する、らしいが。 「これを店頭で売るのか」 「……店頭小売パッケージにはできない。ライセンス数で売る。グリッドコンピューティングの一種」 難しい名前が出てきたが、要は複数のパソコン上で連携して動くソフトウェアらしい。二十台以上のパソコンがある事業所なんかで稼動可能。だから個人用途では売れない。 「ほかにも、セキュリティ機能をオプションで付ける」 そっちのほうが人気出そうだな。近頃の管理職はセキュリティソフトが好きだから。とりあえず食うために、それをメインに事業をはじめてみるか。 翌日、今度は俺がハルヒを呼び出した。 「ということでだな、まず安定収入を得ることが先決だと思う」 「しょうがないわ。お金なんか目的じゃないんだけど、食っていけるだけの余裕がないと困るものね」 「まあ長門が作ったデモを見てくれ」 ノートパソコンの画面に冴子先生より美人なお姉さんが現れた。さすがにハルヒの格好をしたキャラクタなんか見せたら猛烈に怒り出すだろう。 『おはようございます、涼宮さん。三十分後にミーティングです。出席者は社長、事業部長、課長、担当者です。議題は四点、プリントアウトしている資料に目を通しておいてください。新着のメールは二十件。そのうち、一時間以内に返信が必要なものは四件です』 「なんか、仕事に管理されてるって感じね」 「無駄がなくていいじゃないか」 「無駄がないのはいいんだけど。なんか足りないのよね」 曖昧だな。なんかって何だ。俺も考え込んだ。 「萌えよ萌え!いわゆるひとつの萌え要素」 なにを言い出すかと思ったらまたそれか。 「この秘書、もっと若くしてメイド服着せて、眼鏡っ子にしたらどうかしら。きっと仕事もはかどるわ」 たまにスケジュールミスとか打ち合わせバッティングしそうな秘書だな。 「性格も選べるといいわねぇ。ツンデレとかお嬢様とか。女性向けにイケメン秘書も。ジョークなんか飛ばしてくれると和むわ」 「お前、別のゲームと勘違いしてんじゃないのか」 「ソフトウェアなんて所詮は道具よ。だったら、かわいかったりかっこいいほうがいいに決まってるじゃない」 朝比奈さんみたいな秘書だったら、まあ、一理あるな。 「もうちょっとキャラクタ性が欲しいのよね」 機能に関しちゃなにもなしかよ。 「……分かった」 長門はちょっとがっかりしたようだった。まあそうしょげるな、ハルヒは何も分かってない。いっそのことミニハルヒで売りに出すか、本人の営業付きで。 数日後、バージョンアップした秘書が現れた。 『ハーイ古泉くんげんきぃ?昨日はよく眠れた?もしかして彼女と一晩中ウフフだったのかしら。あら、眉間に皺なんか寄せちゃって、冗談よん』 画面には“メールを読む・今日の予定を聞く・昨日の彼女の話をする”の選択肢が現れた。業務が三択かよ、分かりやすすぎる。 「いい感じですね」 「俺もいいと思う。音声認識させたらキーボードもマウスもいらなさそうだな」 男は単純だ。 「古泉くんみたいなキャラはいないの?」 「……設定すれば、可能」 「じゃあキャラクタをオプションで売りましょう。渋めの中年が好きな人もいるし」 表向きは秘書ソフトなんだが、バックで超高度な人工知能とデータベースが動いてることには興味なさげだった。まあ顧客ってのはそういうもんだろうけどな。 「それでだな、これを主力商品にするのはいいんだが、長門ひとりに開発を任せるのは負担が大きすぎる。だから俺らも勉強して、せめてセールスエンジニアくらいの仕事はこなせるようになりたい」 「僕も多少なら手伝えますよ。専攻ではありませんが、情報工学も取っていましたから」 「プログラム書けるか?」 「ええ。たしなみ程度なら」 そうだったのか。思わぬ伏兵だな。 「ハルヒ、お前も勉強しろ」 「分かったわ。しのぎよね」 「長門、お前は大学院を優先させてくれていいから。無理なスケジュールで働くことはないからな」 ハルヒが趣味で作る会社のために長門の時間を潰させたくない。 「……分かった」 長門に気を使ってそうは言ったが、こいつがいないと会社が回らないかもしれない。思いのほか長門も、ハルヒとつるんでなにかはじめられることを喜んでいるようで、溜息をついているのは俺だけとなった。まあ、しばらくは付き合ってみるか。せめてハルヒが飽きるまでは。潰れたらそんときまた考えればいい。 残るは資金だが。これが最も重要な課題で、しかも難題だ。ハルヒの会社に投資してくれるような酔狂なやつは、たぶんこの世界にはひとりもいない。 「古泉、お前の機関の財政状態はどうなんだ?」 「最近は締め付けが厳しいですね。経費清算もやたら書類ばっかり書かされます」 どこぞもそうだよな。このご時世、金が余ってるなんてやつがいたらお目にかかりたいもんだ。 「機関ってどういう金で動いてるんだ?」 「世界を守るという、我々の目的に同調してくださる御仁が数名いらっしゃいまして。その方々のご支援によっています」 「その、御仁への見返りは?」 「いちおういくつかの会社法人を抱えていますから、その利益を少しでも還元していますね。多丸氏はそのへんの財務を担当しています」 なるほど。どの世界でもしのぎが必要なわけだ。 「出資者はどれくらいいるんだ?」 「片手で数えるくらいです。前にも言ったかもしれませんが、鶴屋さんはその御仁のご息女です」 そういえばそんなことを聞いた覚えがある。鶴屋さんか……。 「もしかして、鶴屋さんに出資を依頼しようとお考えですか」 「分からんが、ダメモトで当たってみる価値はあるな」 「では僕は顔を出さないことにしましょう。機関は鶴屋家には直接的には関わらないというルールがあるので」 「そうか。じゃあ俺は週末にでもハルヒを連れて鶴屋さんに会ってくる」 「なんであたしが鶴ちゃんにお金を借りないといけないのよ」 「金が天から降ってくるとでも思ってるのか」 「銀行に借りればいいじゃないの」 「銀行は借りる必要がないことを証明してはじめて融資してくれるんだよ」 「は?」 「つまりな、銀行は支払能力があることを認定しないと貸してくれないんだ。俺たちには担保物件になりそうなものもないだろ」 ハルヒが実家を抵当に入れると言い出さないかハラハラした。 「妙なことになってるのね金融って。しょうがないわ。ただし、」 「ただし、なんだ」 「タイムマシン開発がうちの主力事業だということははっきりさせておくわよ」 いくら鶴屋さんが物好きでも、それを言い終わらないうちに断られるぞ。 「わははっ。さすがはハルにゃんだねっ。で、タイムマシンはいつ完成するんだい?」 だから言うなっていったのに。鶴屋さんに会うのは卒業式以来か。相変わらずあっけらかんとしていた。大学を出てから親父さんが経営する会社をいくつか任されているらしい。 「ええと、そっちは研究事業ということにして、ソフトウェア開発を主体に考えているんです」 「ほ~う。キョンくんそっちに詳しいんだ?」 「詳しいのは長門のほうでして、あいつが開発担当になる予定です。俺たちはもっぱら営業ですね」 俺は年度ごとの事業展開と収支の見込みをまとめた事業計画書(外様向け)を見せた。 「な~るほど。出資してもいいけど、ひとつだけ条件があるんだけどねっ」 「なんでしょうか」 「タイムマシンができたら、あたしを乗っけて江戸時代に連れてっておくれよ」 「そりゃもちろん」 まかり間違って完成するようなことがあったらですが。江戸時代って、まさか山に埋まっていたアレを調べに行くんじゃ。 「いやぁ、うちにはいろいろと謎の言い伝えがあるんっさ。それを調べに行きたいね」 これだけのお屋敷を数百年も維持している一族だ、いくつものミステリーが眠っているに違いない。 「それで、一億くらいあればいいかい?」 「……は?」 俺もハルヒも、目が点になった。 鶴屋さんが言うには、会社経営じゃ一億なんてあっという間に消えてしまうものなのらしい。 「消えていくお金をどれだけ回収できるか。そこが社長の手腕よ、あはははっ」 なるほど、肝に銘じておきます。というかハルヒ、しばらく鶴屋さんのところで修行させてもらえ。 とはいえまだ収入の見通しも立っていないので、初年度分の人件費と設備費を借りるだけにしておいた。資本金が一千万を超えないほうが税金が安いらしいからな。それに、ハルヒに大金を持たせたらえらいことになりそうだし。 俺たちは三回くらい畳に頭をこすりつけて礼を述べ、鶴屋さんちを後にした。 「キョン、早速事務所を借りに行くわよ。まずは足場を作らないとね」 そんな、ビルの建設現場みたいに。 翌日、俺は古泉と長門を呼び出して開業資金が調達できたことを伝えた。 「さすがは鶴屋さんです。本当の投資家というのは、あのような方のことを言うんですね」 ただ無謀なだけかもしれんが。 「社屋はやっぱり駅に近いほうがいいわよねぇ」 「僕の知り合いに不動産を扱っている人がいましてね。彼ならいい物件を知っているかもしれません」 知り合いって機関の連中か。古泉にこっそり尋ねてみた。 「ええまあ。不動産も営んでいますから」 「ゆりかごから棺桶まで何でも揃いそうだな、お前の機関」 「ええ、墓石もあります。お安くしておきます」 いや、冗談だから。 古泉の案内で空き事務所を見に行った。さして古くはない雑居ビルの四階だった。これが北口駅から徒歩三分という、絶好のロケーションにあった。偶然じゃないだろこれ。 「明るくて広いし、いい物件ですね」 「ここにしましょう!ドリームも近いし。集合場所にも近いわ」 この歳になって市内不思議パトロールはいいかげんやめてもらいたいもんだが。 月曜日、俺は今の職場に辞表を出した。友達と会社を作ることになったのでと言うと、上司が呆然と俺を見た。自分がクビになったら雇ってくれと涙ながらに頼まれたが、まだ俺自身が食っていけるかすらも分からないので考えておきますとだけ答えておいた。残りの一ヶ月は引継ぎだけだ。少し気分がいい。 ハルヒは欠勤プラス有給消化でさっさとやめてしまっていた。通常は一ヶ月の余裕を見て辞表を出すもんなんだが、とても待てなかったらしい。 「キョン、次の土曜日に事務所開きをするわよ。SOS団のハッピを作ってくれるところ、探しといて」 事務所開きって……まるで涼宮組じゃないか。家紋入りの提灯も必要か。 忙しい人ばかりにもかかわらず、週末にはいろんな知り合いが集まってくれた。出資者の鶴屋さん、機関の森さんに新川さん、多丸兄弟。喜緑さんも差し入れを持ってきてくれた。他にもハルヒの大学時代の友達やら、俺の前の会社の知り合いやらで賑わった。ちなみに今年高校三年になる妹もいた。 まだ長テーブルとパイプ椅子しかないがらんとしたフロアで、団員四人と鶴屋さんがSOS団オリジナルハッピを着て酒樽のフタを割った。ハルヒは上戸だった。酒は一生飲まないとか言ってなかったか、おい。 宴が終わる頃、ハルヒがぼそりと言った。 「みくるちゃんがいたら……巫女衣装で出てもらったのにね」 それから一ヵ月後。俺は元の職場を無事退社し、今日が株式会社SOS団の初出社だ。昨日、やっと登記が済んだ。ハルヒは待てずにひとりで出社している。これまた殊勝なことに、机やらパーテーションやら内装やら、肉体労働を全部自分でやったらしい。 出社第一日目となる今日、朝メシを食いながら新聞を開いて、目が飛び出るくらいに仰天した。覚えていると思う、十年前に俺とハルヒが東中のグラウンドに描いた謎の地上絵を。全面広告にアレが出ていたのだ。絵文字がでかでかと載っているだけで、何の宣伝ともどこの会社とも書いていない。でかい絵文字の下にちょこっとホームページのURLが書かれてあった。こ……このURL、SOS団のじゃないか。妙な焦燥感が俺を包んだ。なにかまずいことが起るとき、この感じに襲われる。これは緊急召集だ。 俺は携帯を取り上げた。 「古泉、今朝の新聞見たか」 「ええ、見ました。涼宮さんが広告を出したんですね」 「そんなのん気なこと言ってていいのか。これの意味知ってるよな」 「ええ知ってます。載せるならSOS団のエンブレムでもよかった気がしますが。会社登記が済んだのでその記念でしょう」 「記念って。URLが書いてあるってことは集客するためだろう」 「涼宮さんがウェブに長門さんの秘書システムの紹介を載せたみたいですよ」 「全然聞いてないぞ。いったいいつだ」 「三日くらい前だったかと」 全国紙の全面広告だ、それでも十分すぎるくらいに宣伝効果はある。これでもし問い合わせが殺到したら。 「古泉、急ぎ出社してくれ。緊急事態だ」 俺は食いかけたメシもそのままに玄関へ走った。 「キョンくん、ご飯くらいちゃんと食べて行かないとだめよ」 妹が呼びかける声がしたが、そんなことを気にかけてる場合じゃない。俺は自転車を飛ばした。車なんかに乗ってる余裕はなかった。道々、長門に電話して事情を伝え大至急出社するよう頼んだ。順風満帆で起業できたと思ったら、いきなりこの暴風雨か。 「やっほー!早いじゃないのキョン」 やっほーじゃないよまったく。初日から飛ばしてくれるぜ。 「今朝の広告、お前の仕業か」 「そうよ~。なかなか派手な初広告でしょ」 「新聞広告って締め切りは最低でも一ヶ月前だろう。どうやって頼んだんだ」 「さあ。ちょうどキャンセルが入ったらしいからタイミングよかったんじゃないの」 そのタイミングとやらはきっとお前自身が作り出したんだな。ハルヒが鼻歌を歌いながら、近所で買い漁ったらしい新聞の広告ページを壁に貼り付けていた。 「全国紙で全面広告って、お前掲載にいくら払ったんだ?」 「三千万くらい、かな」 さ……さんぜんま……。眩暈がした。俺たちの給料の何年分なんだ。うちの資本金を軽く超えてんじゃないかよ。 俺は時計を見た。まだ八時半だな。 「ハルヒ、あのな、全国紙ってことは軽く八百万人が見てるってことなんだ。仮にそのうちの一パーセントが興味を持って問い合わせてきたらどうなると思う?」 「電話が鳴るわね」 鳴るだけじゃないよまったく。 「殺到だ殺到!下手すりゃ一週間くらい電話対応に追われるぞ。電話だけじゃない、メールもパンクする」 「いいことじゃないの。こっちで客を選べるんだから」 分かってない、お前はなにも分かってない。俺は頭を抱えた。 「遅くなりました。おはようございます」古泉が顔を出した。 「……出社した」続けて長門も現れた。 初出社がこんなでなけりゃ、長門のフォーマルスーツ姿をじっくり眺めて心安らぐ余裕もあったのだろうが、それどころではなかった。 「お前ら、全員電話の前に座れ。今日一日電話対応だ。長門、事業内容と製品概要を軽くまとめて人数分プリントアウトしてくれ」 「……了解した」 長門にも意味が分かったようだ。手早く作業に取り掛かった。 「俺は燃料を調達してくる」 近所のコンビニに走った。食えなかった朝飯の分と、栄養ドリンク、のど飴、人数分のおにぎり、その他カロリーメイトなどなどを調達した。 俺は時計を見た。もうすぐ九時を回る。そして今日が、SOS団のいちばん長い日の始まりである。 「お電話ありがとうございます、株式会社SOS団です!」 「どうもお世話になっております、SOS団です」 「……SOS団の、電話」 九時十分ごろから五つあった電話が一斉に鳴り始めた。新聞とホームページを見た客からの問い合わせに、事業内容とかろうじてひとつだけある製品の説明を繰り返し繰り返し伝えた。終業時間が来る頃には全員ノドが枯れていた。 長門にはメール対応も頼んだ。形態素解析とかなんとかいうプログラム技術で、メールの本文を分析し内容に応じて自動返答する仕組みを作り、さくさくと処理していた。余談だが、ホームページのアクセスカウンタが桁が足りなくてとうとう壊れたらしい。かつてのハルヒ自作のSOS団エンブレムを上回る集客効果だ。 電話は六時を過ぎても鳴り止まない。しょうがないので就業時刻を終えたメッセージを入れた留守電に切り替えた。 当然ながらこの日、休み時間は一切なかった。午後七時、全員がぐったりと椅子によりかかっていた。ある者は机に突っ伏していた。メーカーのサポートセンターってきっとこんな感じなんだろうなぁとかぼんやりと妄想していた。 「ハルヒ……明日もこんな感じだぞきっと」 「悪かったわよ……」 「……緊急会議を提案する」長門がぼそりと言った。 ふだんから無口な長門に電話対応をさせたのは、ちょっとかわいそうだったが。イライラした客から上司を出せと何度も言われたらしい。 「会議?なにか議題あるのか」 「……受注数が予定で二十件を超えた。外注したほうがいい」 なるほど。長門は電話対応しながらまめに営業してたのか。 「二十件の注文が取れたの?すごいじゃない」 ハルヒが突然元気を取り戻した。 「……まだ、営業担当を訪問させる約束を取り付けただけ」 「それでもすごいわ、二階級特進して昇進よ!」 やれやれ、二階級特進が好きだな。ハルヒが腕章を取り出して副社長と書き込んだ。そのストックまだあったんだ。 「……拝命する」 長門は両手で腕章を受け取った。気のせいかもしれんが、嬉しそうだな。 「長門さん、昇進おめでとうございます」 古泉が拍手した。俺もしょうがなしに拍手した。そういえばハルヒと知り合ってからずっと、俺だけが腕章をもらってない気がする。いや別にいいんだが。 「外注っていっても、やってくれそうなところがあればいいが」 「……心当たりは、ある」 長門がスクと立ち上がった。 「って、これから行くのか?」 「……そう。来て」 いくらアウトソースといっても、アポくらいしていったほうがいいんじゃないだろうか。この時間だし。 ぞろぞろと三人で長門の後をついていった。エレベータに乗ったが、長門は三階のボタンを押した。 「このビルか?」 「……そう」 偶然にしちゃえらく近くにあったもんだな。俺たちの部屋があるちょうど真下に、IT関係っぽいカタカナの名前の会社があった。規模はそれほどでかくなさそうだが。 俺はドアの前でインターホンを押した。 「すいません、営業担当の方、いらっしゃいますか」 「どちらさまでしょうか?」 「上の階に事務所を構えている株式会社SOS団と申しますが」 そこでインターホンの向こうから咳き込む声が聞こえた。 「な、なんですって!?」 「突然で申し訳ありません。お仕事をお願いできないかとご相談に上がった次第なんですが」 「ちょ、ちょっとお待ちを」なぜか慌てている。 ドアが開いてわらわらと人が出てきた。 「な、なんでキミタチがこんなところにいるんだ!」 誰かと思えば。見覚えがあるどころか、忘れもしない。朝比奈さんとの強制セクハラ写真を撮られた挙句、パソコン一式、いやそれ以外にノートパソコンまで取られたあのコンピ研部長氏だった。あのときの部員が全員いる。 「あら、あんた。コンピ研の部長じゃないの。お隣さんだったのね」 「部長じゃないよ!社長だよ社長」 「奇遇ね。あたしも社長なのよねぇ」 これはどう考えても奇遇じゃないだろ。俺はちらりと長門を見た。長門は我関せずの顔を決め込んでいた。 数年ぶりのご対面がこんなだったが、いちおう客として応接に通してくれた。 「で、なにしに来たのキミたち」 「新聞広告出したら注文が殺到しちゃってさあ。うちの仕事手伝ってよ。報酬はそうね、あんたんとこが三でうちが七でどう?」 まるでありがたく仕事をくれてやる態度だな。俺たちがやったのは電話対応だけじゃないか。ぼったくりにもほどがある。 「残念だけど、僕たちもう廃業するんでね」 「えっ、そうなんですか」 俺は驚いた。この人なら技術も経営ノウハウも十分ありそうなのに。 「この業界って仕事の取り合いでなかなか難しいよ。最近は人件費が安い海外の企業に流れることが多いし」 生半可な気持ちではじめた俺らとはえらい違いだ。うちもうかうかしてはいられない、明日はわが身かもしれん。 「一年前に意気揚々とはじめた会社だったのに、残ったのは債務の山だけ。このパソコンも全部抵当なんだ」 部長氏は愛する機材をなでなでしながら大きくため息をついた。 「じゃあ、あたしがあんたたちを買い取るわ。企業買収って一度やってみたかったのよねぇ」 「おいハルヒ、そんな金どこにあるんだ」 「なんとかなるわよ。うちの実家を担保にしてもいいわ」 お前の親父さんが汗水たらして二十年間ローンを払いつづけてる一戸建てをか。いくら一人娘とはいえそれは酷なんじゃ。 部長氏を見ると難しい顔をして呆然としていた。これが沈みかかった船への救助なのか、あるいは地獄の日々がはじまる予兆なのか考えているようだった。 「もう、好きにしてくれ……」 「じゃあ、あんたにはシステム開発部部長の肩書きをあげるわね」 「なんでもいいよもう」 「担当副社長は有希だから、この子に任せるわ。あんたたち、有希のこと好きでしょ」 「ええっ、ほんとかい?」 「有希、こいつらの面倒みてくれるわよね?」 「……たまになら」 部長氏は願ったり叶ったりといった感じで手を打って喜んだ。まあ、コンピュータが分かる者同士、長門とならうまくやっていけるだろう。 部長氏の会社は看板が変わっただけで、今日付けでうちのシステム開発部に吸収合併された。株式会社SOS団はメンツも増え九人になった。いよいよ大所帯だな。 部長氏の負債だが、出資者の鶴屋さんに頼むほかなく、結局全額引き受けてもらうことになった。実家を担保にしなくてよかったな、ハルヒ。まあこれだけ受注が来てるんだ、全部掃けたら保守費も取れてうまい具合に回るだろう。副社長の長門は三階と四階のフロアを往復する毎日だった。大学院の授業もあるだろうにご苦労だ。俺も営業に回れるだけの知識を得るべく、しばらくは長門に教えてもらいながら勉強の日々だ。 文中の“涼宮ハルヒシミュレータ”は◆eHA9wZFEww氏による作です「涼宮ハルヒの常駐」 3章へ